老後2,000万円不足問題に「年金返せ!」とデモ行進する前に現実と向き合うべき

2019年6月3日に金融庁が発表した報告書の内容について炎上しています。
夫婦で老後30年くらい生きるとすれば、公的年金だけでは生活できず、2,000万円くらいの自助がないと月平均5万円くらいの赤字になりますよ!
という内容の報告ですが、無知な国民にとっては青天の霹靂だったようです。

今回の発表を受けて

  • もらえる年金が少ない!
  • 納めた年金返せ!
  • 老後の生活を保障しろ!

と騒ぎ立てている人が多いですが、ちょっと待って下さい。

誰が年金の制度を変えると言いました!?
金融庁は年金を減らすなんて一言も言ってませんよね!?

受け取れるはずの年金支給額が減らされるというのであれば、話は別ですが
今回の金融庁の発表はあくまで、今の年金制度が続いた場合の試算結果を報告しただけです。

年金だけで暮らせると思ってたのに聞いてないぞ!

というのは単なる勉強不足です。
2,000万円赤字問題を初めて知ったという人は、金融庁の報告を真摯に受け止めて自分で何か対策を取るべきです。

日本の年金制度は積立方式ではなく賦課方式

デモをしている人の中には、「納めた年金を返せ!」と阿鼻叫喚している人がいますが、こういう人は年金の制度を理解するところから始めた方が良いです。
残念ながら働きながら納めてきた年金は、あなたのために積み立てられたわけではありません。

日本の公的年金は賦課方式を取っています。
賦課方式というのは、現在働いている現役世代が、現在の高齢者の為に年金を納める制度です。
賦課方式の良いところは高齢者よりも現役世代の割合が多ければ多いほど、現役世代が少ない負担で高齢者を支えられる点です。
日本の場合、戦後間もない頃は人口動態が綺麗なピラミッド型をしていました。
高齢者よりも若い世代が圧倒的に多かったのです。
このような場合、賦課方式が有効です。

しかし、現代は少子高齢化が進んで人口動態が大きく変化しています。
賦課方式は少子高齢化に弱い制度です。
高齢化が進むと現役世代の負担が大きくなります。

現役世代が高齢者を支えるイメージの有名な例えがあります。

現役世代の年金負担について

1965年頃・・・胴上げ型
65歳以上の高齢者1人に対して9.1人で支える社会

2012年頃・・・騎馬戦型
65歳以上の高齢者1人に対して2.4人で支える社会

2050年・・・肩車型
65歳以上の高齢者1人に対して1.2人で支える社会

このことから、賦課方式の年金制度の下で、年金だけで生活できる将来を期待するには無理があることがご理解頂けたのではないでしょうか?
騎馬戦型の現代ですら年金だけでは生活できず、働いている方もいらっしゃるのに、未だに将来、年金だけで生活できると思い込んでいる人が多いようですが、そのような人は年金制度について勉強することをおすすめします。

将来、年金をいくらもらえるかは「ねんきん定期便」を見ればわかる

みなさんは今まで年金をいくら納め、将来いくら受け取ることができるのかキチンと把握できていますか?
ほとんどの方が把握できていないと思います。
きちんと把握できているのであれば2,000万円不足問題の報告に対して過剰な反応は起こさないはずです。

今まで、年金をいくら納めて、将来いくら受け取れるのか知るには、年に1回送られてくるねんきん定期便を見ればわかります。

将来もらえる予定の金額については加入実績に応じた年金額(年額)の(1)と(2)の合計額で確認できます。

今まで納めた年金の額については、保険料納付額(累計額)の(1)と(2)の合計額で確認できます。

ちなみに私は1985年生まれですが、現時点の金額では65歳から8年間年金を受け取れば、今まで年金を納めた額が回収できる計算になりました。

妻の場合でも試算しましたが、7年半で納めた年金の元が取れる計算になりました。
一般的な人の場合でも平均10年前後で元が取れるようです。

したがって、年金は絶対に納めた方が得です!

年金が少ないだの、年金返せだの国に文句を言っている人やデモ活動をしている人達は、このことがわかっていないと思います。

年金だけで生活できなくなるのは昔から分かりきった事実

公的年金は、厚生年金に加入している会社員であれば、年金を受け取れる年齢になってから10年も経てば大半の人が元が取れてしまう言わば高金利の保険のようなものです。

自分が払った以上のお金が年金として返ってくることを知らずに国を批判する人が多すぎます。
大した額も支払っていないのに、自分たちの老後の生活を保障しろ!というのは単なるわがままでしかありません。

金融庁は定められた年金はきちん支払います。それでも生活費としては不十分なので、自分で貯めて下さいとアドバイスをしているだけです。
しかし、年金制度について理解していない国民が多すぎて「2,000万円不足」という不安を煽るキーワードだけが独り歩きしてしまっています。

現役時代にちゃんと年金を納めて、定年退職後も平均寿命並に生きていれば大半の人は自分が支払った以上の金額をもらうことができます。
それでも、生活費としては不十分なので不足分は自分で補填してくださいと金融庁はアドバイスしているのです。

そのことを理解しないまま国に八つ当たりするのはお門違いと言えます。

数字も見ずに、根拠のない不満をぶつけるのは賢い選択とは言えません。

金融庁は自助を促すのため「NISA」と「iDeCo」を設立

金融庁は年金だけで生活できないことが分かっていたので、あらかじめ国民が路頭に迷わないための対策はしていました。

それはNISAiDeCoです。

NISAとiDeCoについて、ざっくり説明すると、どちらも株や投資信託を運用して、利益が出た場合、通常20%程度の税金がかかるところ、全額非課税にしますよ!というお得な制度です。

NISA(つみたてNISA)は資産をいつでも利益確定して現金化することができます。
私は、つみたてNISAで資産運用しています。

iDeCo個人型確定拠出年金と呼ばれ、原則60歳までお金を引き出すことができません。所得控除の対象となるため、掛金に応じて所得税、住民税が一部控除されます。NISAには所得控除がありません。

どちらも投資商品ということで多少なりとも元本割れのリスクはあります。
投資慣れしていない人は損をしたくないという理由でNISAやiDeCoを敬遠しています。
確かに1ヶ月単位、1年単位といった短いスパンで見ると元本割れすることは多々あります。

私の場合、つみたてNISAを2018年1月より2019年6月現在まで1年半運用しています。
現時点の結果はというと約60万円の元本に対して約1,000円の損益となっています。

なんだ!やっぱり損するじゃないか!

NISAやiDeCoは元本割れする可能性があるからやめておいた方が良い!

そう思われるかもしれませんね。
しかし、私自身はというと損益が出ているからと言って全く気にしていません。
なぜなら、20年運用することを前提としているからです。

2018年~2019年にかけての1~2年という短いスパンで見ると世界的に経済が停滞しています。
大きな原因としては米中貿易摩擦が挙げられます。

日経平均株価もここ1~2年で最高時は24,000円を超えていましたが、この記事を作成している2019年6月現在は21,000円前後を推移しています。
一番ひどい2018年12月には20,000円を切りました。

私の場合、日経平均や世界経済と連動している投資信託を購入しているので、経済が停滞すれば損をし、経済が成長すれば利益が出ます。

この先20年間ずっと経済は停滞したままでしょうか?

その可能性は低いでしょう。
過去を振り返ってみると長期で見た場合、平均3%程度の割合で経済は成長しています。
ここ2年程度は停滞期の為、利益が出ていませんが、長期で運用すればするほど利益が出る可能性が高くなります。

つみたてNISAの最長運用期間が20年に設定されているのは、長期運用によって利益が生まれるためです。
長期運用することのメリットはもう一つあります。
それは複利の効果です。

複利とは元本だけでなく運用で出た利益に対しても、利益が上乗せされる仕組みのことです。
運用期間が長期になればなるほど、雪だるま式に利益が増え続けます。

つみたてNISAやiDeCoは長期運用を前提とした商品です。
1ヶ月や1年単位で見ると損をする月、損をする年が出てくることはあります。
しかし、長期で運用することでトータルで損をする可能性は限りなく低くなります。

積立投資で2,000万円の資産を作るには?

つみたてNISAやiDeCoの場合、毎月定額のお金を積み立てて資産運用します。
金融庁は2,000万円の自助が必要と言っているので、どうすれば2,000万円貯まるのか試算してみましょう。

2,000万円の資産を作るには?

毎月5万円積立の場合
年利7%で運用・・・18年
年利5%で運用・・・20年
年利3%で運用・・・24年

毎月3万円積立の場合
年利7%で運用・・・23年
年利5%で運用・・・27年
年利3%で運用・・・33年

毎月1万円積立の場合
年利7%で運用・・・37年
年利5%で運用・・・45年
年利3%で運用・・・60年

つみたてNISAの場合、年間投資金額が40万円までと決まっています。
月平均で言うと33,333円なので月5万円積立しようと思えば、つみたてNISA以外でも投資信託等で資産運用する必要があります。

月3万では20年運用しても2,000万円に届きません。
貯金や他に資産運用するといった対策が必要があります。

月1万円では20代の人ならなんとかなるかもしれませんが、30代以上であれば全然足りません。
積立額を上げるか、他に資産を増やす方法を考えなければいけません。

2,000万円を貯めるシミュレーション結果から自分がこれから何年間でいくら貯めなければいけないかという目途が立ってきたのではないでしょうか?

他のパターンでも試算してみたい方は、楽天の積立シミュレーションサイトを活用してみて下さいね。

「貯金する余裕がない」と嘆いても誰も助けてくれない

理論上、毎月いくら投資すればよいかご理解頂けたかと思います。
問題は実際にその金額を定年まで積立し続けることができるかということです。

今の生活では、投資に回せるお金がないという方も多いと思います。
しかし、残念ながらあなたの老後の生活を国は保証してくれません。

老後も生活費を稼ぐために働き続けるか、今のうちに資産形成をして老後に備えるかは個人の自由ですが、もし後者を選びたいのであれば定年を迎えるまでに最低でも2,000万円の金融資産を確保しておきたいです。

貯金や投資に回せるお金がないのであれば、今の生活を見直す必要があります。
まずは無駄遣いを減らしましょう。

毎日何気なく使ってしまっているお金はありませんか?
たとえば、カフェ代、タバコ代、お酒代、お菓子代等です。
1回限りであれば少額で済みますが、少額のものだからと習慣化してしまうと積み重なって多額になります。
1杯300円のコーヒーを毎日飲めば、1年間で109,500円の出費になります。
このような毎日の何気ない出費のことをラテマネーと言います。

ラテマネーを意識して節約すれば貯金や投資に回すお金が増えます。

次に考えるべきことは収入を増やすことです。
とはいえ、会社員や非正規雇用者の人が収入を増やそうと思っても、そんなに簡単に給料は上がりません。
職場の給料アップはすぐには見込めないので副業を考えましょう。
未だに副業禁止の会社が多いですが、時代の流れとしては副業は徐々に認められつつあります。

バイトを探すのも良いですが、今ではSNSの発達により、YouTuberやブロガー等、ほぼ資金ゼロからノーリスクで始められる手段もあります。

がっつり稼がなくても、貯金用、投資用に月数万円の収入があれば十分です。

まとめ

思ってたより年金が少ない!老後までに2,000万円も貯めれるわけない!と言ってデモ行進したところで、何も変わりません。
年金を増やしてほしいのであれば、国民からもっと税金を取ればいい話ですが、そういう人に限って増税に対しても反対運動しているんじゃないでしょうか?
税金を上げてもいいから、もっと年金を払ってくれ!と主張する人なんていませんからね。笑
年金はたくさん払え!(でも、税金は上げるな!)というのがデモをしていた人たちの主張と考えられます。
これって常識的に考えたら、ただの我がままです。

国としては、少子高齢化社会においても、納めた額より給付金の方が多くなるように気遣いはしてくれています。

そのことを理解した上で不足分については自分で貯める努力が必要となります。

金融庁としては投資初心者でも始めやすいiDeCoやNISAといった資産運用の手段まで用意してくれています。
老後赤字問題を国のせいにして、意地でも金融資産を作らないか、それとも、金融庁の報告を真摯に受け止めてiDeCoやNISAといった資産運用の対策を取るか、あなたはどちらが得策だと思いますか?