サニブラウンは何故9秒99を出せたのか?

サニブラウンが100メートル走9秒99の記録を樹立

アメリカ 大学南東地区選手権の男子100m走決勝でサニブラウン・ハキーム選手が9秒99をマークしました。
日本人が10秒を切ったのは2017年に桐生祥秀選手が9秒98の日本記録を樹立して以来、2人目の快挙です。

日本新記録には、あと一歩及びませんでしたが、長年日本人選手が超えられなかった9秒台を出せたということで、非常に喜ばしいニュースですね!

記録を出した本人は意外と冷静

今回の記録を知り、多くの日本人は熱狂したと思います。
しかし、当の本人はというと、記録を見て喜びを爆発させることもなく意外と冷静な反応を見せたことが話題となりました。

とはいえ、速報タイムでは10秒00で悔しそうな表情を浮かべ、その後、正式タイムで9秒99が表示された時は安堵の表情は浮かべていました。

サニブラウンは何故9秒99の記録を出せたのか

サニブラウン選手は日本人としては2人目の9秒台を叩き出せたわけですが、なぜ今回10秒の壁を打ち破ることができたのでしょうか?

その理由は、本人の努力と効果的な練習方法も大きく影響しています。
しかし、それだけでは10秒を切れたかどうかわかりません。

サニブラウン選手の強さの秘密は、彼の目標にあります。
彼は高校時代から世界記録であるウサイン・ボルト氏が持つ9秒58を目標として掲げています。

今回、9秒99という記録を出しましたが、レース後のインタビューではこう答えています。
「正直、そんなに速く走っている感じはなかった。いつも通りの走りをして、フィニッシュした感じ。(9秒)99なんで誤差かな」
つまり、サニブラウン選手にとって、10秒00も9秒99も大して変わらないという認識なのです。

目標である9秒58から見れば、10秒00だろうが、9秒99だろうが、はたまた日本記録タイの9秒98もそれを上回る9秒97でも、彼にとっては誤差でしかないということです。

サニブラウン選手が9秒99を出せた理由

それは、サニブラウン選手の目標が10秒を切ることでも、日本新記録を出すことでもなく、世界新記録を目指している点にあると私は考えます。

100点を取るには120点取れる努力が必要

私が学生時代、塾に通っていました。
塾の先生の言葉の中で印象に残っている言葉があります。

「100点を取りたかったら、120点取れる力をつけなさい」

これくらい頑張れば100点を取れるだろうと慢心するのではなく、もっと突き詰めた努力をすることで初めて100点が取れるという意味です。

100点を取るための勉強をしても90~95点しか取れないと言われていました。

サニブラウンは日本記録ではなく世界記録を目指している

サニブラウン選手は、9秒台に関しては「そのうち出るだろう」と思っていたそうです。
サニブラウン選手にとって9秒台を出すことは初めての経験ですが、目標はその先にありました。
9秒58を超えるための練習をしているので、日本のマスコミやファンが騒ぐほど9秒台を出すこと自体に価値は見出していなかったのです。

もし、9秒台を出すこと、日本新を出すことを目標にしていたら9秒99は出せていたか?

出せないとは言い切れませんが、出せた可能性は今より低くなったのではないかと思います。
それは、9秒99を出すための練習と9秒58を出すための練習は異なるからです。

サニブラウン選手は城西高校を卒業後、アメリカのフロリダ大学へと進学しました。
それは、世界で戦える選手になるためです。

もし、日本一を目指すのであれば日本の強豪大学に進学していたかもしれません。

世界記録を目指すか日本記録を目指すか、目標の設定次第でやり方が大きく変わってきます。

彼は、世界記録を目指すためにアメリカの大学に進学しました。
そう考えると、9秒台を出すことは単なる通過点に過ぎないということがわかりますね。

高い目標を持てば覚悟が変わる

社会教育家 後藤静香氏が有名な詩を残しています。

『第一歩』

十里の旅の第一歩

百里の旅の第一歩

同じ第一歩でも 覚悟がちがう

三笠山にのぼる第一歩

富士山にのぼる第一歩

同じ第一歩でも 覚悟がちがう

どこまで行くつもりか

どこまでのぼるつもりか

目標が その日その日を 支配する

サニブラウン選手の場合、日本新記録を目指すための第一歩ではなく、世界新記録を目指すための第一歩として、アメリカへの留学を決意しました。
覚悟を決めて目標に向かって邁進し続けています。

日本国民としては、まずは日本新記録の樹立を期待しますが、将来的には、その先の目標に向かって行って欲しいですね。