2019参議院選が終了しました。
今回は各党からタレント候補と呼ばれる著名人が多数出馬していました。
タレント候補と呼ばれている候補者全員を把握し切れているわけではありませんが、私が知る限り下記の12名が挙げられます。
政党 | 名前 | 区分 | 肩書き | 当落 |
自民党 | 山本左近 | 新人 | 元F1レーサー | 落選 |
丸山和也 | 現職 | 弁護士 | 落選 | |
山東明子 | 現職 | 元女優 | 当選 | |
橋本聖子 | 現職 | 元スケート選手 | 当選 | |
立憲民主党 | 奥村政佳 | 新人 | 元RAG FAIRメンバー | 落選 |
須藤元気 | 新人 | 元格闘家、WORLD ORDERメンバー | 当選 | |
おしどりマコ | 新人 | 漫才師 | 落選 | |
斉藤里恵 | 新人 | 筆談ホステス | 落選 | |
市井紗耶香 | 新人 | 元モーニング娘。 | 落選 | |
国民民主党 | 円より子 | 元議員 | 評論家 | 落選 |
れいわ新選組 | 山本太郎 | 現職 | 元俳優 | 落選 |
蓮池透 | 新人 | 拉致被害者家族 | 落選 |
上記12名のうち当選したのは、わずか3名でした。
そのうち2名は現職なので、新人で初当選したのは須藤元気氏1名のみです。
得票数だけで見ると約96万票を集めた山本太郎氏が比例最多得票を集めたのですが、彼の場合は特定枠を利用して彼が代表を務める「れいわ新選組」の候補者2名を優先的に当選させました。
自分の票で党員2名を当選させ、自らは落選するという特殊な例ですね。
仮に山本太郎氏が特定枠を利用せずに普通に立候補していれば当選確実でした。
山本太郎氏が当選していたとしても、当選者は12名中4名に留まっていた計算になります。
今までの傾向を見ていると今回のタレント候補者の当選率は異常に低いですね。
数年前まではタレントや著名人が立候補すれば政治経験がなくても高確率で当選していました。
国会議員に限らず、著名人が立候補すれば都道府県知事も誕生していました。
今回の選挙で著名人がほとんど落選してしまったのは時代の流れが変化してきたからではないかと思います。
では、なぜこのような現象が起きたのか原因を探っていきたいと思います。
タレント候補者が次々と落選した原因
①過去のタレント議員の評価が低かったから
数年前までは政治家としての知識や経験がなくても、有名人であれば何故か票が集まって当選するという現象が起こっていました。
プロ野球のオールスターでは、その年に活躍した無名の選手よりも、その年の成績が悪くても過去の実績と人気で選ばれる選手が多いです。
一方で、アメリカのメジャーリーグでは、その年の成績がよくないと知名度が高くてもオールスターの選手には選ばれることはありません。
日本の場合、政治においても実力や実績よりも知名度や人気の方が投票において優先される傾向があったようです。
政治家としての実績がなくても、単に知名度や人気があれば当選しやすい時代が長らく続いていました。
しかし、タレント議員が増えていく中で有権者もようやく気付き始めたようです。
多くのタレント議員は政治家としての役割を十分に果たせていないと。
過去のタレント議員が実績を残せなかったので、別のタレントが新たに立候補しても期待できないと考えるようになったのだと思います。
今まではタレントに期待して票を入れていたけど、結果を残せない人ばっかりで、今度の候補者も期待できないという失望ですね。
②有権者の見る目が養われたから
今までの説明だとタレント議員=無能と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
タレント議員の中でも、本気で政治に取り組む優秀な議員も少なからずいます。
以前の有権者は、自らの意思で立候補し、本気で取り組む候補者と政党から依頼を受けて立候補した所謂客寄せパンダ的な候補者の区別がついていなかったように思えます。
今回の選挙では有名人が次々落選したことから、有権者が知名度だけでタレントに投票する時代は終わったという印象を受けました。
票を集めるのに大事なのは人気・知名度よりも信用
かつての選挙は、政治家としての能力より知名度で選ばれる傾向がありました。
そのため、政治家としての実績がなくてもタレントや著名人が立候補すれば高確率で当選していました。
しかし、今回の選挙結果を見てみるとタレント候補が惨敗しています。
もはやタレントとしての知名度だけでは当選できない時代になったと言えます。
これから政治家に必要なのは政治家としての信用です。
認知度よりも信用が大事なのは政治だけに限りません。
例えば、クラウドファンディングでも同じことが言えます。
知名度の高い芸能人がクラウドファンディングで資金を募っても失敗する人が多いです。
それは、そのプロジェクトに対するタレントの信用が不十分なためです。
キングコングの西野亮寛氏やホリエモンこと堀江貴文氏は著名人でありながらクラウドファンディングにも成功していますが、彼らが成功したのは、そこに信用があったからです。
信用を集めるための秘訣
では、彼らがどのようにして信用を集めたかというと、理由としては大きく2つあります。
①嘘を付かない
キングコング西野もホリエモンも思ったことをそのまま言うタイプです。
悪く言えば空気を読めない発言をするので、よく炎上します。
このように周りに同調せずに、自分の意思を押し通す人は世間から煙たがられます。
世間的には嫌われ者のイメージが付きまといますが、彼らには他者とは違う個性や一貫性があります。
そのため、忌み嫌う人が多い一方で、強力な支持者も一定数存在するのです。
空気を読んで本音を言わずに、好感度を上げることを考える人よりも、嫌われようが嘘を付かずに自分の意思を貫く人の方が熱狂的な支持者を獲得しやすいのかもしれませんね。
②オンラインサロンで信用を集めている
2人ともオンラインサロンと呼ばれるコミュニティを運営しています。
オンラインサロンとは、ネット上のプロジェクトチームのようなものです。
キングコング西野の絵本やホリエモンのロケット開発のプロジェクトはオンラインサロン上でプロジェクトを進行させています。
キングコング西野の絵本「えんとつ町のプペル」は発行部数約40万部のベストセラーになりました。
作者はキングコング西野なので、彼1人で作り上げた作品であると思っている方もいるかもしれませんが、この作品は彼が主宰するオンラインサロン上でサロンメンバーと何度も打ち合わせを行い完成させた作品です。
オンラインサロンでは主宰者が一方的に情報を発信するだけではなく、参加者全員がプロジェクトメンバーとして能動的に活動しています。
ここで主宰者とサロンメンバーの結束力が高まり、主宰者への信用に繋がるのです。
この状態でクラウドファンディングを行えば、必然的に資金は集まります。
テレビと視聴者の関係では信頼は築けない
クラウドファンディングに失敗するタレントというのは、自分を応援してくれる人との信頼関係が築けていません。
テレビタレントと視聴者の関係では認知度があっても、視聴者から見れば「外の世界の人」でしかないのです。
そのため、芸能人がプロジェクトを達成するために資金を募っても他人事で終わってしまいます。
逆に無名の一般人でも芸能人以上にクラウドファンディングで資金調達する人がいますが、それは自分が信用されるコミュニティをしっかりと形成しているからです。
選挙活動で市井紗耶香に足りなかったもの
今回の選挙で落選したタレント候補の例として市井紗耶香氏の落選の原因を考察していきます。
私は選挙活動期間中に偶然、演説をしている立憲民主党の集団を見かけました。
その中に市井紗耶香氏もいました。
モーニング娘。の元メンバーとして知名度があり、現在は4人の子を持つ母として子育て環境を充実させるためにと言って立候補していました。
彼女は知名度だけであれば、今回立候補した著名人の中でもトップクラスです。
それでも落選したのは、彼女に政治家としての信用がなかったからです。
まずは政治家としての勉強不足が指摘されました。
以前から政治に関わる番組に出ていた等、何かしらの実績があれば話は変わっていたのでしょうが、前触れもなく突然立候補したため、国民にとって政治家としての資質の疑問が残ったのだと思います。
彼女のアピールポイントは子育て支援ですが、具体的な政策も掲げていませんでした。
「若いお母さんたちは何か問題があっても実際に声を上げることは少ない。」
「声を上げることは決して恥ずかしいことではない。」
「一歩踏み出す勇気を持ってほしいということを発信していきたい」
ということを発言していましたが漠然としていますね。
国民が知りたいのは、今の子育て制度の何が問題で、どのように変えていくのかであって彼女の意気込みを知りたいわけではありません。
単に「頑張るから応援してね!」というのはアイドルであれば通用するかもしれませんが、政治家としては通用しません。
では、市井紗耶香氏が政治家としての信用を獲得するためには何が必要だったのでしょうか。
信用を獲得するために必要なもの
①政策
市井紗耶香氏には具体的な政策がありませんでした。
ただ子育て支援のために頑張りますと言っても信用できません。
余談ですが、このような人を擁立しているようでは立憲民主党の信用もガタ落ちですね。
②実績
タレント候補にありがちなのですが、政治家として活動するための実績が何もないまま立候補する人がいます。
政治家になって初めて行動を起こすというのは順番的に間違っているのではないかと思います。
子育て支援で支持を集めたいのであれば、子育て支援に関する事業を行っていたといった実績があれば信用に繋がります。
本人に出直す意思があるかは不明ですが、もし本気で子育て制度を変えたいのであれば政治家になる前に、子育て支援の活動を行った方が良いのではないかと思います。
③質の高い支援者
ここでいう支援者とはモー娘。時代のファンでも立憲民主党の支持者でも枝野氏でも蓮舫氏でもありません。
「子育て支援に取り組む市井紗耶香」の支援者を集うのです。
地域のコミュニティやオンラインサロン等を通して同じ思いを持つメンバーを集めれば信用が生まれ政治家としての評価が上がります。
まとめ
かつては人気のあるタレントを擁立すれば当選する事例がよくありました。
知名度と支持率が比例していたのです。
これからの時代は知名度だけでは支持されません。
国民からの信用を勝ち取るためには、政治家としての地道な活動が必要となります。
時代とともに国民の見る目も養われています。
各政党はタレントとしての認知度だけで容易に候補者を擁立するとかえって信用を失うことになります。
一方で、真面目に政治に向き合っている人は、やり方次第では多くの支持を集めることができるチャンスが巡ってきているということが言えます。